朽ちていくものに、終わりではなく始まりを見る。 小野象平の作品は、その静かな確信から生まれています。
1985年、愛知県生まれ。 現在は高知県香美市の山あいにて、土と火、そして時間と向き合いながら作陶を続けています。
20代後半で陶芸の道に入り、鯉江良二に師事。2014年には父である陶芸家・小野哲平氏のもとで学びを深め、その後独立されました。
以降、小野象平の制作は、器を「作る」という行為そのものを問い直す営みとなっています。
自ら山へ入り原土を採取し、木を燃やし、その灰から釉薬を作ります。高温で、幾度も繰り返される焼成。
そうして生まれるかたちは、偶然と必然の境界に立ち、他の誰にも辿り着けない景色を宿しています。
それが「彼にしか作れない」と評される所以でもあります。
手に取ったときに伝わる、確かな重み。 おおらかでありながら、どこか張りつめた緊張感を湛えた輪郭。 その佇まいには、作品としての完成度だけでなく、小野象平自身の内面や気配までもが静かに映し出されているように感じられます。 日常の器という役割を越え、空間そのものの重心を変えていく存在でありながら、作り手の人となりをも、そっと伝えてくる作品です。 作り手の気配が自然と立ち上がるその瞬間を、私たちは作家と近い距離で見つめてきました。
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《錆びの塔》は、《錆びる形》と名付けられたシリーズの中核をなす作品です。 テーマは「朽ちゆくものがもつ美しさ」。
朽ちることは、失われることではありません。
人が歳を重ね、肌に刻まれる時間の痕跡のように、
物もまた、変化の過程において新たな美を獲得していきます。
《錆びの塔》が表現しているのは、完成ではなく、生成の途上にある美です。
止まることのない時間の流れの中で、終わりなく更新され続ける価値のかたちを示しています。
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本作は、鉄や銅の釉薬を施した後、特殊な焼成によって表面を酸化させることで生み出されています。
それは一般的な「錆釉」とは異なり、陶という素材を、あたかも金属のように変質させる独自の技法です。
赤錆や青錆は、時間をかけて育てられ、最も美しく色づいたその一瞬を見極め、コーティングによって留められます。
しかし、それは完全な停止ではありません。
屋外の環境に置かれ、風雨にさらされることで、コーティングの奥に眠る錆は再び息を吹き返します。
湿度の高い梅雨には深い青へ、寒さと乾燥に包まれる冬には淡い水色へと、表情を変えていきます。
焼き物でありながら、まるで生き物のように、時間と共に変化し続ける存在。 《錆びの塔》は、「完成された作品」という概念そのものを静かに揺さぶります。
《錆びる形》シリーズの中でも、《錆びの塔》は限られた個展の場でのみ発表されてきた、非常に希少性の高い大型作品です。 アートオブジェとして鑑賞いただけるのはもちろん、陶器製ですが、着座することが可能なスツールやサイドテーブルとしてもご使用いただけます。
《錆びの塔》は使い手の想像力によって、作品は新たな役割を与えられ、再び時間の中へと解き放たれていきます。
それは、所有するための作品というよりも、時間を共に過ごしていくための存在なのかもしれません。
本記事でご紹介している作品は、Rurbanismオンラインストアにてご覧いただけます。

